赤い月
夢のように消えた重圧。
「へ…」
「傷ついた身には、妾の鬼気はきつかろう。
しばらくそれを纏っておれ。」
次々と倒れていく地上の僧たちから燃える眼を逸らさず、彼女は景時に語りかけた。
「案ずるな。
あの者らも気を失ってしまえば、妾が手を下す必要もあるまい。」
あぁ…
やっぱり君は…
冷たい声。
蔑むような物言い。
笑わぬ口元。
でも…
「…ありがと。」
景時は羽織に顔を隠して、彼女の香りを胸一杯吸い込んだ。