赤い月
「ああああのっ
こんな時にナンだケドっ
俺、君がっ」
「飛弾!!」
「は?」
目前に迫る光の礫は、明らかに彼女に向かっていた。
景時は咄嗟に盾になるべく身を捩ったが、彼女の白い手が腰を押さえてそれを阻む。
飛来する礫は彼女が一瞥しただけで、呆気なく霧散した。
「ちっ」
舌打ちが聞こえた方に視線を落とすと、薫が怒りを露にこちらを睨んでいた。
額に浮かぶ脂汗。
震えながら片膝をついて巨大な鬼気に耐え、掠れる声を張り上げた。