赤い月

ガシャーン


ガラスの割れる音が、景時の追憶を破った。

鎖を断ち切ったオニが、廃ビルに逃げ込んだようだ。

繁華街への突入はひとまず阻止できたが、景時の表情は厳しさを増した。


「縛鎖!」


雷光の鎖を上空に放ち、廃ビルの屋上に引っ掛けたそれを縮めていく。
バジュラを握った景時の躰は宙を舞い、ものの数秒で屋上に降り立った。

時間がない。

< 8 / 170 >

この作品をシェア

pagetop