赤い月

「え…?」


慌てて彼女の顔を見ようとするが、羽織が邪魔をする。

ねぇ?

今、笑わなかった?


『止すのじゃ、薫。』


彼女の言葉にピクリと反応した薫が、手からバジュラを落とした。


「あ… あれ?」


戦意までもどこかに落っことしたような間抜けな薫の様子に、景時は自分の失態に気づいた。


「あ…
俺、薫の名前…」


「そなたは阿呆じゃからな。」


バッサリ切り捨てる涼しい声に、返す言葉もない。


「…ゴメンナサイ…」

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