赤い月
秋時の嘆願を鷹揚に遮って、彼女は担いでいた景時を秋時に向けてふわりと放り投げた。
「ぉわっ」
「ぅおっと?」
体勢を崩しながらも無事に景時を抱きとめた秋時を、彼女は形の良い眉を寄せ、軽く睨んだ。
「勘違いするでない。
妾は、朔じゃというのにフラフラと夜遊びに繰り出し、文字通り鬼ごっこに興じておったその阿呆を、巣に連れ戻っただけじゃ。」
「?!」
息を飲み、鋭く景時に目をやった秋時の顔は蒼白だった。
素早く腕の中にいる孫のケガを確認し、安堵の溜め息を漏らす。