赤い月

が、すぐに苦しげに眉を顰めた。


「では、もうすぐオニどもがここに…?」


「追っては来ぬ。
妾がその者を喰らったからな。
妾の獲物に手を出す阿呆はおらぬ。
それに日が昇れば、加護もその者の身に戻る。」


「…
なんとお礼を申し上げれば…
それになにもかもご存知で…」


秋時の苦い声は小さく、最後は口の中に消えるようだった。


「…住職?」


そのただならぬ様子と不穏な会話に、尋ねるように声をかけたのは薫だった。

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