赤い月
あからさまな子供扱いに、チクリと胸が痛む。
なのになぜか心地よくて、猫のように目を細めてしまう。
「では、真の己を知るが良い。
そして今宵のような愚かな真似は、二度とするでない。」
離れていく優しい手と香りが名残惜しくて目を開けると、彼女はもう背を向けて歩き出していた。
「ちょ…
待って、待って!」
慌てて秋時の腕を抜け出し追おうとするが、足がもつれてよろけてしまう。
「ありがとっ
…その…色々、全部!」
彼女は足を止め、肩越しにチラリと振り返ったが、すぐに視線を戻してしまった。