秘密な関係
何で早く立ち去らなかったんだ

目の前では男が名前を呼ばれ嬉しそうに手を振っている

俺は振り返ることも、その場を去ることも出来ず

じっと立っていた

けれど、このままではさすがに気まずいだろ

じゃっ失礼しますって行こうとしたのに

声の主は俺に気づいたらしく

「安達くん…」

ってちっさな声で呼んだ

「ひ、久しぶり…荒川」

「うん。久しぶり」

「な、何だ。やっぱり彼の待っている人って荒川だったんだ」

「えっ!?どういう事?」

「彼、時計を買ってくれたんだ。八階で」

「そ、そうなの?」

と俺を避けて男の方を見る荒川

男は買ったばかりの腕時計を手を振って見せた

「何だ、うちのデパートで買ったんだ」

「ああ、お陰で売り上げ達成して助かったよ」
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