恋人達の時間
ecstacy ~俊哉&詩織~
「好きよ」
一瞬だけ私によこした俊哉の視線は
また何事もなかったように
手元の本へと戻された。
「好きよ。あなたが好き・・・」
俊哉の腕に私の腕を絡めて
体を寄せてじっと見つめても
クールな横顔はそのまま。
「好きで好きで仕方ないの」
肩に頭を預けて太腿に手を置いても
小さく咳払いをひとつしただけの俊哉はポーカーフェイスを崩さない。
「ね・・・俊。
あなたを思うだけで胸が苦しいわ」
掴んで私の左胸に当てた俊哉の手首がピクリと小さく反応した。
「ドキドキしてるの、わかる?」
私の胸に当てたままの俊哉の手を
両手で抱きしめるようにして
更に強く胸に押し付けた。
「わかった。わかったから・・・」
手を離してくれないか、と
やっと私を見た俊哉の瞳には
困惑の色が浮かぶ。
「私に触るのが嫌なの?」なんて
そうでないのが分かってて
「迷惑とか鬱陶しいとか思ってるの?」と上目遣いで切なげに見上げる私は確信犯。
俊哉はふう、とため息をついて
閉じた本をテーブルに置いた。