恋人達の時間
そんなドキドキが虚しくなる。
まさかお昼寝したかったから、なんて理由で
あんな事言ったんだったらタダじゃおかないから!
もぅ浮気しちゃうぞ、と
頬をつついてみてもぴくりともしない。
油性のマジックで顔に鼻ヒゲとか丸眼鏡とか
落書きしてやろうか?
それともフルメイクにネイルもしてやろうかしら?
うーん…でもそれは後の仕返しが怖いわよね。
今起こすのはちょっと可哀想な気もするけれど
ごめんね。健人。
起きてもらわなきゃ甘く過ぎる時間も
ドキドキする瞬間も何も話にならない。
私もう…待てない。
まず手始めに健人の額へそっとキスをしてみる。
次は左の頬へ。それから鼻の頭。
続けて右の頬。そして…唇。
ふわりと触れるだけのキスを顔中に降らせた後は
シャツのボタンを2つ外して左右の鎖骨に
そしてもう一つボタンを外して
左の胸にも唇を寄せれば ふわりと香るコロン。
健人の香り。
目を閉じて香るそこへ落とした唇に
トクトクと穏やかな鼓動が伝わってくる。
健人の音。
その場所を少しきつめに唇で吸い上げて
小さな紅い痕を残す。
まだ起きない?
それなら―――
耳にキスして耳朶を甘く噛み
首筋を唇で辿ってみる。
ここにも同じ香り。
咽喉仏と顎先を軽く舌で掠めてから
もう一度唇へキス。
挟むように 押し付けるように
上唇と下唇を行き来してから
啄ばんでみたり
舌先でちょんちょんと唇を突付いてみたら
突然開いた健人の目と私の目が合う。
やっと起きた。