蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
4.極夜の国
───何か温かいものが、絢乃の全身を包み込んでいる。
ちゃぷん、と耳元で音がする。
絢乃は睫毛を震わせ、ゆっくりと目を開けた。
と同時に、絢乃の肩に回った腕に力が込められる。
「・・・気が付いたの、アヤ?」
耳元に囁かれる言葉。
・・・少し湿り気を帯びた、黒褐色の髪が絢乃の耳に触れる。
絢乃は浴槽の中で、後ろから慧に抱きしめられていた。
壁に嵌めこまれた時計は、04:30を指している。
「・・・」
絢乃はぼんやりと時計を見つめた。
・・・いつのまにか、自分は風呂に入れられていたらしい。
思わず身じろぎした絢乃を、慧がぐっと背後から抱きしめる。