蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~




やがて慧は絢乃を抱き上げ、そのまま浴室を出た。

まるで壊れ物でも扱うかのようにそっとベッドに下ろし、バスタオルで絢乃の体を包む。

絢乃は疲労のあまり目を閉じ、慧にされるがままになっていた。

一通り体を拭かれた後、絢乃の耳に低い囁きが忍び込む。


「もう夜が明ける。・・・これが最後のキスだよ、アヤ」


───言葉とともに。

慧の唇がそっと絢乃の唇に押し当てられた。

絢乃はぼんやりと慧の唇を受けていたが、唇越しに何かが口の中に押し込まれたことに気付き、眉根を寄せた。

そして一旦唇が離れた後、今度は口移しで水が流し込まれる。

絢乃は口の中に入れられたものを、思わずこくんと飲み下した。

───数秒後。

なぜか、耐えられない睡魔が絢乃を襲う。

今、飲んだもののせいだろうか。

突然の睡魔に目を閉じた絢乃を、慧の腕がそっと抱きしめる。


「・・・お前は、今夜のことは忘れて。悪い夢を見たと思えばいい」

「・・・っ・・・」

「───でもおれは忘れない。一生忘れない。・・・愛してる、アヤ・・・」


慧の言葉が、しだいに遠ざかっていく。

絢乃は睡魔に導かれるまま、意識を手放した・・・。


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