蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~




時計を見ると、12:30。

テーブルの上にはホテルのルームサービスだろうか、軽食が置かれている。

そして・・・

ベッドのサイドテーブルに、見覚えのない服と靴が置いてある。

淡いピンクの、とても肌触りの良いワンピースと、ベージュの靴。

絢乃が好みそうな色合いや素材と言い、サイズも形もぴったりな靴といい・・・

───これを用意できるのは、この世の中で一人しかいない。

見ると、卓海に買ってもらったドレスや靴はいつのまにかなくなっている。

絢乃はその服に手を伸ばし、そっと触れた。

・・・とても優しい、その手触り。

絢乃は自分の視界が涙で滲むのを感じた。


せめて今朝だけは、卓海が用意した服を着て欲しくない───。


そんな慧の想いが、この服から伝わってくる。

絢乃は服を手に取り、胸元にぎゅっと抱きしめた。


「・・・慧兄・・・っ」



< 105 / 200 >

この作品をシェア

pagetop