蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
時計を見ると、12:30。
テーブルの上にはホテルのルームサービスだろうか、軽食が置かれている。
そして・・・
ベッドのサイドテーブルに、見覚えのない服と靴が置いてある。
淡いピンクの、とても肌触りの良いワンピースと、ベージュの靴。
絢乃が好みそうな色合いや素材と言い、サイズも形もぴったりな靴といい・・・
───これを用意できるのは、この世の中で一人しかいない。
見ると、卓海に買ってもらったドレスや靴はいつのまにかなくなっている。
絢乃はその服に手を伸ばし、そっと触れた。
・・・とても優しい、その手触り。
絢乃は自分の視界が涙で滲むのを感じた。
せめて今朝だけは、卓海が用意した服を着て欲しくない───。
そんな慧の想いが、この服から伝わってくる。
絢乃は服を手に取り、胸元にぎゅっと抱きしめた。
「・・・慧兄・・・っ」