蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~




堰を切ったように、涙が目尻から溢れ出す。

───自分は、何も知らなかった。

慧がどれほどの気持ちを自分に向けていたのか。

どれほど深く、激しい愛情を、自分に向けていたのか・・・。


どうして・・・

・・・自分は、気付かなかったのだろう。


慧が与えてくれるもの、慧がしてくれることを何も考えずにただ甘受していた自分。

慧が兄として自分を包み、守ってくれることを有難いと思いこそすれ、その裏にある慧の気持ちには気付きもしなかった。

・・・慧がどんな気持ちで自分のためにいろいろしてくれていたのか・・・。

それを考えると、胸が張り裂けそうに痛む・・・。


きっと自分はこれまでに、ひどく慧を傷つけてきただろう。

自分の行動、態度・・・

慧がたまに見せたひどく切なげな、寂しげな視線の理由が今ならわかる。


でも・・・。



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