蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
慧が自分にこんなに激しい気持ちを抱いていたとは、絢乃は想像すらしていなかった。
今でもまだ、昨日の夜のことが夢か幻のように思える。
けれど体中に刻み込まれた赤い痕が、情熱の証が、夢ではないと告げている。
例え自分の何を犠牲にしてでも、慧に戻ってきて欲しいと思ったことは嘘ではない。
慧が戻ってくるならどんなことでもできる、と・・・
あの時そう思った気持ちに、嘘偽りはない。
けれど事態は、全く想定外の方向に進んでしまった。
絢乃は涙を流したまま、嗚咽した。
自分は・・・
・・・どうすれば、いいのだろう・・・。
自分は・・・慧は・・・。
考えても考えても、わからない。
絢乃は頭を抱え、枕に涙に濡れた顔を押し付けた・・・。
───その日の夜。
結局、絢乃はマンションには戻らず、品川のビジネスホテルで一夜を過ごした。
・・・慧に会っても、どんな顔をすればいいのかわからない。
絢乃の心は混乱の極致にあり、絢乃は一日中、昏い顔で物思いに耽っていた。
こんな状態では、明日仕事に行っても皆に迷惑をかけるだけだろう。
絢乃は体調不良で休む旨のメールを、春美の会社携帯に送信した。