蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
5.混乱
翌日。
絢乃の姿は田園都市線の溝の口にあった。
マンションがある宮崎平までは、ここから電車で15分ほどの距離だ。
絢乃は駅前のカフェで、窓の外に行き交う人々をぼんやりと眺めていた。
「・・・」
このまま、マンションに戻らないわけにはいかない。
───ずっと、逃げ続けるわけにはいかないのだ。
自分の帰るところは、あのマンションしかない。
慧が自分のために心を尽くし、ずっと守ってきてくれた、かけがえのない『家』。
恐らく慧は、兄として普通に絢乃に接してくるだろう。
───絢乃のために。