蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~



───それから3日後。

会社からの帰り道。

絢乃はマンションへと続く道を、沈鬱な表情で歩いていた。

慧は、以前と同じ態度で兄として絢乃に接してくる。

けれど、自分は・・・。


「・・・・・」


リビングにいても落ち着かないことが増え、絢乃は自分の部屋で過ごすことが多くなった。

・・・無意識のうちに、慧を避けてしまう。

無視するつもりではないのだが、無意識のうちに体がそう動いてしまう。

慧は前と変わらぬ態度で絢乃に接してくるが、絢乃の態度が普通ではないことにとっくに気付いているはずだ。

それでも慧は、絢乃にいつもと同じ、穏やかで優しい笑顔を向けてくれる。

───兄として、絢乃を包み込む笑顔。

慧がどんな気持ちで自分にその笑顔を向けているのか・・・

それを考えると、胸が軋むように痛む。


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