蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
絢乃を抱きしめた瞬間、絢乃の瞳に浮かんでいたその決意に、慧は心が奈落へ落とされるような気がした。
───絢乃の心は、微塵も自分の方には向いていない・・・
そう悟りながらも、慧は絢乃に触れるのを止められなかった。
触れてしまえば、戻れなくなる。
───兄妹では、いられなくなる。
激情と切望に身を任せたこの一夜の報いは、後で受けることになるだろう。
そうわかっていても、絢乃を抱きしめずにはいられなかった。
絢乃を傷つけると、この一夜が後で絢乃を苦しめると、わかっていても・・・
それでも、絢乃が欲しかった。
「・・・アヤ・・・」
自らの腕の中で快楽に涙を滲ませた、絢乃の顔。
慧が触れるたびに、動くたびに、溶けていった絢乃の体。
・・・想像していたより、ずっと綺麗で、嫋やかだった絢乃の体。
慧は熱情に追い立てられるように、夢中で絢乃を抱いた。
絢乃が泣いても、止めることはできなかった。
・・・この夜の記憶があれば、自分は一生、絢乃のために兄でいてもいい。
そう、思った。
・・・けれど。