蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~



慧はぐっと唇を噛みしめた。

俯き、大きなため息をつく。


一度想いを遂げれば、満足できると・・・諦められる、と・・・

絢乃を抱く前は、そう思っていた。

けれど思いとは裏腹に、絢乃への想いは加速度的に増していく。

しかし自分は、兄としてしか絢乃の前に存在してはならない。

それがあの夜、絢乃を手に入れた代償だからだ。


───目を閉じると、あの夜の絢乃の姿が脳裏に浮かぶ。


慧を見上げた、潤んだ抒情的な黒い瞳も・・・

嫋やかな、柳のような細い腰も・・・

慧を受け入れた、あの熱く潤んだ部分も・・・

そして、絢乃の目から零れ落ちた、真珠のような綺麗な涙も・・・


───どうしても、忘れられない。


一度知ってしまった絢乃の体の感触を、忘れることなどできはしない。

兄でいなければならないと思うのに・・・

絢乃のあんな表情を、誰にも見せたくない。

閉じ込めて、自分だけのものにしてしまいたい。

───そう切望する自分がいる。


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