蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
熱があるせいなのか・・・やたら艶っぽく見えるのは気のせいだろうか。
───掴まれている手が、熱い。
少し骨ばった指先、楕円形の桜色の爪・・・。
自分の爪の形とよく似たその爪を、絢乃はじっと見つめた。
慧は実の兄ではなく血縁上は従兄だが、二人は幼少の頃、本当の兄妹のようによく似ていた。
母の時世と慧の母の昌美も良く似ていたので、そのせいなのだろうが・・・。
やがて慧はそっと絢乃の手を離した。
「あとは自分で食べるよ。・・・お盆の上に置いておいて?」
「・・・わかった。おかゆ食べたら薬も飲んでね?」
「うん、ありがとね、アヤ」
慧は熱で潤んだ目を細め、にこりと笑う。
・・・こんな時でも優しく穏やかな、慧の笑顔。
それはきっと、絢乃を心配させまいとする慧の気持ちが入っているからだろう。
いつも、慧の笑顔は絢乃に安心感を与えてくれる。
そして自分はこの笑顔がいつも傍にあることを、当たり前のように思ってきた。
けれど・・・。