蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~




絢乃を知る前より・・・

・・・知ってからの方が、比べ物にならないほど辛い。

一歩踏み出してしまえば、茨の道を進むしかない恋だということはわかっていた。

それがあの夜の報いなのだとも。

けれど・・・

あの体を卓海も知っているかと思うと、・・・あの体を絢乃自らが卓海の前で開いているのかと思うと、耐えられない嫉妬が胸を焼く。

その嫉妬は前とは比べ物にならないほど、深く、激しい。


「・・・っ、アヤ・・・」


───この数日間。

絢乃はマンションに戻るようにはなったものの、明らかに慧を避けている。

無理もない。

慧は絢乃の沈鬱な表情を思い出し、重いため息をついた。


あの日の翌日。

マンションに戻った慧は、冷蔵庫にロールケーキが入っていることに気が付いた。

・・・絢乃が自分のために作ってくれた、ロールケーキだ。

絢乃がどんな気持ちでこれを作ったかと思うと、慧の胸に鋭い痛みが走った。

慧が戻ってこないと分かっていても、ロールケーキを作った絢乃。

絢乃を苦しめた後悔が、慧の胸を鋭く切り裂いた。


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