蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~



絢乃はずっと、慧を兄だと思っていたはずだ。

このロールケーキを作ったのも、妹として慧の誕生日を祝いたいと思ったからだろう。

そんな絢乃に、自分はなんてことをしてしまったのか・・・。

絢乃はあれから悩み、部屋に閉じこもることが増えた。

けれど絢乃が苦しんでいるのを、自分はただ見守ることしかできない。

───兄として。


しかし・・・。

このままでは、二人の関係は破綻してしまう。

───絢乃は悩み、苦しんでいる。

慧と同じように、これからどうお互い接すればよいのか、悩んでいるのだろう。

慧はずっと、絢乃が欲しいと思いつつも、兄妹としての関係も大事にしてきた。

絢乃が手に入れられないなら、せめて兄妹として、一生絢乃と関わりを持っていきたい。

・・・そう、思ってきた。

けれど・・・。

絢乃に想いを告げた今、二人は兄妹としての関係も失いかけている。

二つのものを手に入れようとして、その両方を失ってしまう・・・

───完璧な、終焉。

それは慧にとって、死にも等しい闇だ。

けれどこのままでは、二人の関係は終焉を迎えてしまう。

凍りつくような昏い予感が、慧の脳裏を何度もよぎる。


< 121 / 200 >

この作品をシェア

pagetop