蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
絢乃はずっと、慧を兄だと思っていたはずだ。
このロールケーキを作ったのも、妹として慧の誕生日を祝いたいと思ったからだろう。
そんな絢乃に、自分はなんてことをしてしまったのか・・・。
絢乃はあれから悩み、部屋に閉じこもることが増えた。
けれど絢乃が苦しんでいるのを、自分はただ見守ることしかできない。
───兄として。
しかし・・・。
このままでは、二人の関係は破綻してしまう。
───絢乃は悩み、苦しんでいる。
慧と同じように、これからどうお互い接すればよいのか、悩んでいるのだろう。
慧はずっと、絢乃が欲しいと思いつつも、兄妹としての関係も大事にしてきた。
絢乃が手に入れられないなら、せめて兄妹として、一生絢乃と関わりを持っていきたい。
・・・そう、思ってきた。
けれど・・・。
絢乃に想いを告げた今、二人は兄妹としての関係も失いかけている。
二つのものを手に入れようとして、その両方を失ってしまう・・・
───完璧な、終焉。
それは慧にとって、死にも等しい闇だ。
けれどこのままでは、二人の関係は終焉を迎えてしまう。
凍りつくような昏い予感が、慧の脳裏を何度もよぎる。