蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~




絢乃の口から嗚咽が漏れ、睫毛に涙が滲む。

・・・ぽろり、と目尻から涙が零れ落ちる。

それを見た慧の顔から、笑顔が消えた。

絢乃は涙で濡れた目で慧を見上げた。



「・・・もう、無理だよ、慧兄・・・」



絢乃の言葉に、慧は一瞬息を飲んだ。

しばしの沈黙の後、その綺麗な形の唇をゆっくりと開く。


「───突然どうしたの、アヤ?」


慧は眉を顰め、じっと絢乃を見下ろす。

・・・その、心配そうな瞳。

絢乃は軽く首を振り、口を開いた。


「・・・もうこれ以上、知らない振りをして慧兄の気持ちに甘えるわけにはいかないよ。だって・・・もう・・・」

「・・・アヤ・・・」



< 125 / 200 >

この作品をシェア

pagetop