蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~




「お前が辛いなら、・・・迷って悩むのが辛いなら、迷わないようにしてあげるよ」

「え・・・っ」

「きっと頭で考えても、答えは出ないよ。・・・だから別の方法で、お前の心が何を望んでいるのか、はっきりさせてあげる」


慧は少し笑って言い、絢乃の肩をそっと壁の方へと押した。

壁に背をつけた絢乃の左耳の後ろの壁に、慧はトンと右手をつく。

息を飲み見上げた絢乃の視線の先で、慧は背を屈めてぐっと絢乃に顔を近づける。

・・・その距離、わずか10センチ。

ふわりと、慧の体から甘く柔らかいウッドノートの香りが漂う。

思わずドキッとした絢乃に、慧は色気を帯びた、少し熱っぽい瞳で言う。


「・・・おれが嫌いなら、逃げなよ?」


慧の言葉に、絢乃は目を見開いた。

慧はくすりと笑い、そのまま続ける。


「逃げるなら追いかけない。おれはここを出て、アヤには一生会わない」


慧はいつもの声で淡々という。

けれど絢乃は、慧の真剣な瞳から、それが嘘でもハッタリでもないことを感じ取っていた。

戦く絢乃に、慧は続けて言う。



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