蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~




もうそろそろ、自分も自立しなければいけない。

いつまでも慧に頼っていてはいけない。

慧との生活は楽しいが、この生活が一生続けられるわけではないのだ。

それに、自分がいつまでも傍にいては、慧の将来の邪魔になってしまう。

組合旅行で慧の元カノが角倉沙耶だと聞いた時から、絢乃は無意識のうちにそう思っていた。

慧が女性たちに人気があるというのは絢乃も昔から知っていたが、まさかあの角倉沙耶が元カノだとは思ってもみなかった。

角倉沙耶を彼女にできるほどの魅力を持つ慧を、妹の自分が独占するわけにはいかない。

それに・・・。


『・・・離さないよ、・・ヤ。おれは絶対に、・・・お前を、離さない・・・っ』


昨日の、慧の悲痛な叫び・・・。

呼んでいたのはきっと、角倉沙耶だろう。

───恐らく、慧は角倉沙耶に深い想いを抱いているのだろう。

二人がどうして別れたのかは、絢乃にはわからない。

絢乃が慧から離れれば、慧は彼女にアプローチを始めるかもしれない。



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