蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~



「・・・逃げないなら、このままキスするよ?」

「・・・っ!」

「キスしたら、お前をおれのものにする。お前がどんなに嫌がってもね?」


慧はあの夜と同じ、熱情と切望に満ちた瞳で絢乃を見つめている。

しかし、あの夜とは違い───その瞳には、大人の強引さが見え隠れしている。

絢乃は慧を呆然と見上げていた。

・・・魂が吸い取られたかのように、身動きが取れない。

そうしている間にも、慧の唇は1センチ、また1センチと近づいてくる。

あと少しで重なるというところで、慧は掠れた声で言った。


「・・・いいの? キスしたら、もう後戻りはできないよ?」


───それは、慧が最後に用意してくれた逃げ道だったのかもしれない。

けれど絢乃の足は、床に張り付いたかのように動かなかった。

・・・慧から逃げたら、慧には一生会えない。

それだけは、耐えられない。

そう思うと、一歩も動くことができなかった。


───やがて。


慧の唇が、そっと絢乃の唇に触れた。

柔らかくて、熱くて・・・少し震えている、その唇。


「・・・捕まえた」


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