蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~



今の慧は、絢乃にとって、兄でもあり恋人でもあり・・・

生活は前とあまり変わらないが、慧の保護欲は以前にも増して強烈なものになった。

・・・保護欲というより独占欲に近いかもしれない。

絢乃は数日前の慧の言葉を思い出した。


『迷って悩むのが辛いなら、迷わないようにしてあげるよ』


・・・今、冷静になって考えると。

あの時、慧は選択肢を提示したが、実際は選択肢ではなかった気がする。

慧に一生会わないなどということを絢乃が選択するはずがないと、提示した時点で慧もわかっていたはずだからだ。

となると。

───選ばせると見せかけて、実は退路を断つ。

慧の意図はそこにあったのだろう。

『迷わないようにしてあげる』の本当の意味を今更ながら理解し、絢乃は何とも言えない思いが胸の中に湧き上がるのを感じた。

もちろん、慧とこうなったことに後悔はない。

けれど本気になった慧は、絢乃の想像以上に手強い気がする。

何しろ、あれだけ頭が良く、あれだけ魅力的なのだ。


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