蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
「・・・」
胸にモヤモヤした黒いものが広がる。
慧の気持ちは絢乃ももう十分に知っているが、やはり気になる。
・・・慧が泊まっていたあのホテルにいたのは、事実だ。
テレビから視線を逸らした絢乃を、慧がじーっと横から覗き込む。
「・・・どしたの、アヤ?」
「・・・なんでもない」
「ひょっとして、嫉妬してるの?」
慧は楽しげに言い、絢乃の顎を指先でそっと掴んだ。
くいと強引に自分の方へと向ける。
・・・その、実に楽しげな、嬉しそうな笑顔。
満面の笑みに近いその笑顔に、絢乃は唖然とした。
「・・・あの、慧兄?」
「お前が嫉妬する日が来るなんてね~。嬉しいな。お祝いでもしたい気分だよ」