蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
初枝は日本酒のグラスを傾け、はぁと息をつく。
母の時世からはたまに絢乃や慧に宛ててメールが来るが、『元気?』というレベルの実に簡単なものだ。
もう二人とも成人しているので、あまり心配する必要もないからだろう。
しかし、まだ絢乃と慧のことについては報告できていない。
・・・それは、初枝に対しても同じだ。
初枝はちらりと絢乃を見、口を開く。
「ところで、お前はどうなんだい? いい人は見つかりそうなのかい?」
───やはりその質問か。
絢乃は焦りを隠すように、慌ててチューハイを傾けた。
慧とは、母や祖母に二人のことをどう伝えるか、まだ話し合っていない。
どうしようと慌てる絢乃の横で、慧がにこりと笑った。
・・・その、やたらにこやかな微笑み。
絢乃は内心でびくっとした。
「そういえば、その件で報告することがあってね」
「なんだい、慧?」
「実はね・・・・」