蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
五章
1.手に入れたいもの
<side.慧>
慧の腕の中で、絢乃は朦朧としたまま浅い呼吸を繰り返している。
・・・その汗ばんだ躰も、汗でしっとりとした黒髪も・・・
全てが、愛おしい。
慧は絢乃が寝息を立て始めたのを確認してから、そっと部屋を出た。
二か月前までは、こんなに幸せな日々がくるとは思ってもみなかった。
───幸せすぎて、不安すら感じる。
幸せであればあるほど、この幸せを絶対に失いたくないと思ってしまう。
絢乃が恋人となってから、その思いは日に日に強まっていく。
絢乃を永遠に自分のものにするにはどうすればいいのか。
・・・と考えた時、慧の脳裏にすっと『結婚』の二文字が浮かんだ。
それはすとんと慧の心に落ち、それからずっと、慧の心はそれに捕われている。