蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~




慧はノートを掴んでいる自分の手を見た。

───絢乃と全く同じ形の爪。

慧は自分の爪が、時世とは似ていないのに、絢乃とはそっくりであることに昔から気付いていた。

慧は震える手で、本棚の脇にあった古いアルバムを取り出した。

それは時世が子供の行事のたびに撮った写真をまとめたもので、時世は子供達が幼い頃、定期的に初枝のもとに写真を送っていた。

慧はアルバムを開き、ページをめくった。

絢乃のお宮参りの写真の中に、藤村良輔が絢乃を抱っこしている写真がある。

・・・その、爪の形は・・・

慧の爪の形と、全く同じだった。


「・・・っ・・・」


去年の秋。

昌美の墓参りに行ったとき、コスモスの花が供えられていたのを、慧は思い出した。

恐らくあれは、藤村良輔が置いたものだろう。

初枝の話の時期とも一致する。


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