蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
慧の瞳に昏く鋭い光が宿る。
慧は静かに隣の仏間に入り、仏壇からライターを取った。
日記とライターを持ち、縁側から庭に降りる。
慧は石でできた流しの上に日記を置き、躊躇うことなく火をつけた。
見る見るうちに、日記は火に巻かれていく。
母の日記と、絢乃・・・
・・・どちらが大事かなど、比べるべくもない。
───例え天の道に背いても・・・
手に入れたいものがある。
その為ならば、自分は何を犠牲にしても構わない。
それが良心でも、人としての道でも・・・。
夜闇の中、赤い炎が風に揺らめいている。
・・・母の嘆きのような、その炎・・・
慧は瞳に炎を映しながら、心の中でひとつの決意を固めていた。