蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~




バレッタはシルバーでできており、リボンの形をしている。

リボンの輪郭に沿って、絢乃の誕生石である小さなエメラルドが嵌めこまれてあり、絢乃はあのバレッタをとても気に入っていた。

───2年前の誕生日。

例のイタリア料理屋でお祝いの夕食をとった後、慧が小さな箱を絢乃に差し出した。


『はい、これ。誕生日プレゼント』


渡された箱を開けてみると・・・。


『わぁ・・・。すごく綺麗・・・』

『お前に似合うかと思って。これなら会社にも付けていけるだろ?』

『うん。ありがと、慧兄』


絢乃がそう言うと、慧はその綺麗な目を細め、嬉しそうに笑った。

・・・その、春の陽光のような明るい笑顔。

昔からいつも傍で見てきた慧の笑顔は、いつも絢乃の心を温かく照らしてくれた。


ちなみに慧の誕生日は12/24、つまりクリスマスイブだ。

なので毎年、クリスマスを兼ねてお祝いをしている。

・・・そういえば大学の時、一度か二度、イブに慧が不在だった年があったような気がする。

今思えば、角倉沙耶と誕生日を過ごしていたのだろう。

なるほどな、と納得する半面、心の隅がなぜかチクリと痛む。


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