蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
「よかった。おれの想像通り、その服、お前によく似合ってる」
「・・・服をくれた誰かさんは朝起きたらいなかったからね」
「仕方ないだろ? そういう約束だったんだから」
慧は肩をすくめて言う。
その少しいじけたような態度に、絢乃はくすくすと笑った。
あの夜のことは二人の間で、もう気軽に話せるようになっている。
───二人の運命を変えた、あの夜。
「ところで、あの黒いドレスと靴は、どうしたの?」
「あぁ、あれ? 捨てたよ。ホテルのフロントに処分を依頼したから、その後どうなったかはわからないけどね」
「・・・」
さすがに卓海への申し訳なさが胸にこみ上げる。
うっと黙り込んだ絢乃の前に、ウェイターがシャンパンのグラスを優雅な仕草で置く。
グラスは慧の前にも置かれ、それと同時に前菜の皿が運ばれてくる。
「・・・さ、まずは乾杯しようか?」