蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
慧はにこりと笑い、その長い指でグラスを持ち上げた。
その仕草と言い、端整な顔立ちによく似合う格好と言い・・・
やはり、慧は格好いい。
・・・そう思うのは、惚れた欲目というやつだろうか。
絢乃はドギマギしながら、そっとグラスを持ち上げた。
「乾杯!」
二人はカツンとグラスを合わせ、乾杯した。
そのままグラスを口元で傾ける。
繊細な泡とフルーティな香りが、口の中に広がっていく。
「美味しいシャンパンだね」
「お前の口に合いそうなものを選んでみたんだ。気に入ってくれたようでよかったよ」
慧は優しく笑い、グラスを置いた。
───いつ見ても穏やかで、愛情に満ちたその眼差し。
慧は乾杯の後、スーツのポケットから小さな細い箱を取り出した。
黒いビロードで包まれたその箱を、慧は絢乃の前にそっと差し出す。
そして・・・。