蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
慧は熱を帯びた声で言う。
絢乃は与えられる快楽の中、慧の言葉を頭の中で繰り返した。
・・・入籍・・・。
頭が朦朧としているせいか、あまりピンとこない。
慧は絢乃を抱き寄せ、愛しげに頬に口づけた。
「・・・籍を入れても、何も変わらないよ。お前の苗字が変わるわけでもないし、お前は正社員だから税金や年金、保険の部分でも何も変わらない」
「・・・」
「生活も、特に何か変わるわけでもないしね。だからアヤ、今月中に入籍したいんだけど、どうかな?」
慧の言葉に、絢乃はぼんやりした頭で考えた。
───特に、何も変わらないなら・・・
今年中にはいずれ入籍するのだ。
なら、今入籍してしまっても、特に問題はないだろう。
絢乃はこくり、と頷いた。
慧はどこかほっとしたように頬を緩ませ、絢乃を真上から見下ろす。
・・・熱情と色に満ちた、愛しげな瞳。
けれどその瞳に一筋の影を見、絢乃は首を傾げた。
───なんだろう、これ・・・。
慧の腕が、絢乃を強く抱き寄せる。
・・・絶対に離さない、というように。
絢乃はあえかな吐息をつき、慧の腕に身を任せた。