蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
4.真実
───3月下旬。
絢乃は通勤用の鞄を片手に、池袋の東口を歩いていた。
今日は会計基準変更セミナーの2回目があり、絢乃は他の課員達と共にセミナーに参加していた。
セミナーは16:00に終わり、直帰ということで絢乃はJR池袋駅に向かっていた。
絢乃の髪はシルバーの髪飾りで纏められてあり、歩くたびに光を反射して眩く輝く。
髪飾りはシルバーの台にエメラルドとタンザナイトがライン状に並んでおり、シンプルだが優美な雰囲気のデザインになっている。
───プロポーズの後。
初めは婚約指輪を、と考えていた二人だったが、絢乃の希望で指輪ではなく髪飾りにしてもらった。
髪飾りなら普段もつけることができるし、実用的だ。
それに何より、あの壊れてしまった髪飾りのことが、どうしても頭から離れなかった。
───贈ってもらうなら、指輪より髪飾りがいい。
絢乃の強い希望で、婚約の品は髪飾りとなった。