蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~



日が傾く中、絢乃は仏花を片手にお墓の中を歩いていた。

昌美の墓は敷地の端の方にあり、墓の入り口からはそれなりに距離がある。

絢乃は昌美の墓の前に着くと、簡単に辺りを掃除した。

古くなった花を取り、持ってきた花を手向ける。

そのまま合掌し、絢乃は昌美に慧とのことを報告した。


───と、その時。


ガサッ、と後ろから足音がした。

振り返った絢乃の目に飛び込んできたのは・・・・


「・・・っ、お父さん?」


コスモスの花を手にした、父の姿だった。

父・藤村良輔は絢乃の姿を見ると、その口元に笑みを浮かべて絢乃の方へと歩み寄ってくる。

しかし父の笑顔を見た瞬間、絢乃の脳裏に、なぜか慧の顔がよぎった。


───慧の笑顔と、似てる気がする。



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