蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
父と一緒に住んでいた時は、そんなことは思ったこともなかった。
父の顔を見慣れていたせいだろうか。
けれど離れた今、こうして見てみると・・・
頬のラインや唇の形が、慧とよく似ている。
というより、ほぼそのものだ。
───背筋を、なぜか冷たいものが走っていく。
父も慧と同じく、容姿は相当整っている。
整った容貌の人間同士なら、パーツの形も似通ってくるのかもしれない。
しかしこれは、『似通っている』というレベルではない。
血の繋がりがなければ、ここまで同じにはならないだろう。
・・・どうして・・・。
氷のように固まった絢乃の前で、父はコスモスの花を墓の前に置いた。
コスモスは昌美が好きだった花だ。
───どうして、父が昌美の好きな花を知っているのか。
絢乃は去年の秋にここに来たとき、同じようにコスモスの花が置いてあったのを思い出した。
「・・・久しぶりだな、絢乃」