蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
『───アヤ、一体どこにいるの!?』
心配そうな慧の声。
───いつも絢乃のために尽くし、心からの愛情を向けてくれる慧。
絢乃は心の中に、これまでにない強い願望が湧き上がるのを感じた。
・・・絶対に、慧と離れたくない・・・。
慧がこの事実を知らないのであれば、自分の胸にしまっておけばいい。
けれど・・・
きっと慧は、気付くだろう。
慧は絢乃の心の変化にとても敏感だ。
その予想通り、慧は電話越しに声を顰める。
『・・・どうしたの? 何かあったの、アヤ?』
───たぶん・・・
慧の前では、隠し通すことはできないだろう・・・。
慧がこの事実を知った時、どう思うだろうか。
・・・自分は、どうすればいいのか・・・。
『・・・迎えに行くから。そこで待っててね、アヤ!』
慧の言葉とともに、プチッと電話が切れる。
・・・ツーツーと鳴る携帯を、ぼんやりと眺めながら・・・
絢乃は、自分の心が昏い闇に彷徨い出すのを感じていた・・・。