蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~




『───アヤ、一体どこにいるの!?』


心配そうな慧の声。

───いつも絢乃のために尽くし、心からの愛情を向けてくれる慧。

絢乃は心の中に、これまでにない強い願望が湧き上がるのを感じた。


・・・絶対に、慧と離れたくない・・・。


慧がこの事実を知らないのであれば、自分の胸にしまっておけばいい。

けれど・・・

きっと慧は、気付くだろう。

慧は絢乃の心の変化にとても敏感だ。

その予想通り、慧は電話越しに声を顰める。


『・・・どうしたの? 何かあったの、アヤ?』


───たぶん・・・

慧の前では、隠し通すことはできないだろう・・・。


慧がこの事実を知った時、どう思うだろうか。

・・・自分は、どうすればいいのか・・・。


『・・・迎えに行くから。そこで待っててね、アヤ!』


慧の言葉とともに、プチッと電話が切れる。

・・・ツーツーと鳴る携帯を、ぼんやりと眺めながら・・・

絢乃は、自分の心が昏い闇に彷徨い出すのを感じていた・・・。


< 190 / 200 >

この作品をシェア

pagetop