蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
<side.慧>
カーテンの隙間から、清かな月明かりが枕元に差し込む。
どうやら雨は上がり、雲は流れていったようだ。
慧は隣で寝息をたてている絢乃の頬に、そっと口づけを落とした。
絢乃の肌には無数の赤い花が咲き、その首筋も胸元も、しっとりと汗ばんでいる。
・・・自らの腕の中で、快楽に煽られ意識を失った絢乃。
せめて今だけは、ゆっくり眠らせてやりたい───。
「・・・アヤ・・・」
慧はじっと絢乃を見つめた。
・・・あの事実を万が一絢乃が知った時。
絢乃が傷つくだろうということは慧も予想していた。
けれど、それでも・・・
───絢乃を一生、離したくないと思った。
そしてその為の策を弄することに、迷いはなかった。
絢乃が事実を知るまでは、罪を背負うのは自分だけでいいと思っていた。
絢乃の傍に居れるのなら、罪ですら、自分にとっては幸福な枷だ。