蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
あの事実を知りながら、絢乃を道ならぬ道に引き入れたのは、自分の罪だ。
慧も自分自身の罪は自覚している。
しかしそれは、二人が戸籍上従兄妹である以上、法によって裁かれるものではない。
裁くとしたら───絢乃もしくは自分自身だろう。
けれど・・・。
絢乃は事実を知っても、慧から離れようとはしなかった。
戸惑い苦しみながらも、慧に向き合おうとしてくれている。
そのことは、慧の心にこれまでにない喜びを与えてくれた。
絢乃からはまだ、愛の言葉を貰ったことはない。
けれど絢乃の瞳が、態度が、自分への想いを表している。
───そのことが、何よりも嬉しい。
絢乃への想いは純粋な愛となって、慧の心を温かく満たしていく。
「・・・愛してる、アヤ」
───自分の全身全霊をかけて、絢乃を幸せにする。
絢乃が将来、慧との将来を選んだことを、一秒たりとも後悔することがないように。
絢乃が、いつも笑顔でいられるように。
慧は絢乃の左手を持ち上げ、薬指で輝く指輪に、そっと誓いの口づけを落とした。
[蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~ [完]]