蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
3.擦り減る理性
<side.慧>
パタン、と玄関のドアが閉じる気配がする。
慧はうっすらと目を開けた。
・・・絢乃は出て行ったようだ。
さっき、リビングの方から所々聞こえてきた電話の内容からすると・・・
恐らく、卓海に会うのだろう。
───なぜ、卓海なのか・・・。
慧の胸に、軋むような痛みが広がる。
二人がこの頃仲が良いのは、慧も気付いていた。
絢乃が卓海の本性を知ってから、慧は絢乃に卓海には注意するよう幾度となく言ってきた。
けれど二人はなぜか距離を縮め、今では土日に二人で出かけるまでになっている。
───せめて、絢乃の相手が自分の知らない男なら良かった。
絢乃が留守にするたびに、どうしても嫌な想像をしてしまう。
寄り添う二人の姿を想像すると、慧の胸は切り裂かれるように痛む。
よりによって、どうして卓海なのか・・・。
自分にはない魅力が、卓海にはあるのだろうか・・・。
冷たく暗い嫉妬が、慧の胸に痛みとともに広がっていく。