蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
望まなければ、裏切られることも傷つくこともない・・・。
そうわかっていても、期待せずにいられない。
絢乃がもっと冷たく自己中心的な性格ならばよかったのに・・・。
そうすれば自分も、ここまで絢乃に惹かれはしなかっただろう。
想いはどんどん高まり、強く激しくなっていく。
・・・これまでにない、荒れ狂うような激しさ。
兄でいなければならないと思う理性が、日を追うごとに擦り減っていく。
・・・このままでは、いつか感情が理性を振り切ってしまう。
これまでは、絢乃の家族でいるために、できるだけ傍にいたいと思ってきた。
けれど想いは耐え切れないほどに高まり、傍にいればいるほど、理性は擦り減っていく。
・・・絢乃の、家族でいるために・・・
一旦、離れた方がいいかもしれない。
一度思った考えは、慧の心を捉えた。
このまま絢乃の傍にいると、いつか感情が理性を凌駕し、自分は絢乃を傷つけてしまう。
それに、絢乃も自立したいと言っていた。
・・・そろそろ、潮時なのかもしれない・・・。
慧はそっと窓から離れ、熱で疲労した体を再びベッドに横たえた。