蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
13:00。
絢乃は宮崎平の駅前で卓海が来るのを待っていた。
やがてロータリーに見覚えのある黒い車体が止まり、中から卓海が下りてきた。
「・・・なんだ、いつ見ても色気のない格好だな、お前」
「・・・」
別に卓海の前で色気を出す必要性もなければ、色気を出したいとも思えない。
絢乃は肩をすくめ、口を開いた。
「あの、加納さん。髪留めは・・・」
「ああ、これだな?」
卓海はシャツの胸ポケットから銀のバレッタを取り出した。
・・・慧に貰った、大事な髪留め。
卓海は絢乃の目の前にバレッタを差し出す。
絢乃はそれを取ろうと手を伸ばした。
・・・が。
卓海はニィと黒い笑みを浮かべると、その手をすっと引っ込めた。
「・・・っ、加納さん!」