蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
卓海の顔に浮かぶ、楽しげな黒い笑み。
───そもそも、この男がタダで返してくれるはずはない。
今更ながら絢乃は自分の甘さを思い知った。
卓海はくすくすと笑いながら言う。
「そんなに返してほしいのか? ・・・そうだな、じゃあ・・・」
・・・やはり、鬼だ。
絢乃は青ざめながらも、キッと唇を結んだ。
そもそも、このバレッタは絢乃の物だ。
鬼にどうにかされる理由はない。
絢乃はとっさにバレッタめがけて手を伸ばした。
「・・・あ、おい、お前っ!?」
「返してくださいっ!!」
「お前、何す・・・っ!?」
卓海の叫びとともに、卓海の手からバレッタが宙に飛ぶ。
・・・それは、弧のような綺麗な放物線を描き・・・
カシャンと、地面に叩きつけられた。
髪を振り乱した絢乃の視線の先で、それは無残にも二つに割れる。
「・・・っ!」