蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
マンションに戻った絢乃は、ぐいと涙をぬぐい、玄関のドアを開けた。
・・・泣いているところを見られたら、慧に心配をかけてしまう。
しかもその原因が慧に貰ったバレッタだと知られたら、とんでもないことになりそうだ。
でも・・・
どうして自分は、バレッタが壊れたことがこんなにも哀しいのだろう・・・。
何かの予感のように・・・
なぜか、心の中にモヤモヤとしたものが広がっていく。
自分でも、よくわからない・・・。
絢乃は自分の部屋に戻って心を落ち着けた後、慧の部屋のドアを静かに叩いた。
「・・・あれ、アヤ・・・?」
「お昼過ぎたけど、食欲ある? あるなら何か作るけど・・・」
慧はその長い睫毛を瞬かせ、ゆっくりと目を開けた。
・・・熱で潤んだ、その美しい瞳。
その中に、淡い灯火のような熱情が揺らめいている。
熱のせいなのか・・・。