蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~




「慧兄、できたよー」

「・・・うん、今行く」


声の後、しばらくして、慧がダイニングに姿を現した。

髪は汗で寝乱れ、パジャマの前ボタンはほとんど留まっていない。

いつもなら説教レベルの風体だが今日ばかりは仕方がない。

・・・しかし、さすがに正視できない。

絢乃は意識して視線を逸らしながら、グラスに水を注いで慧の前にトンと置いた。


「汗かいたでしょ? 水を飲んで。後で買い物行ったら、ポカリを買ってくるから」

「・・・え、いいよ。もう熱も下がったし・・・」

「ダメ。今日は私が家事をするから。慧兄はゆっくり休んでて?」


絢乃はきっぱりと言い、慧の向かいに腰を下ろした。

慧はグラスを手に取り、ゆっくりと傾ける。

・・・水をこくりと飲むたびに動く、白い喉。

少し汗ばんだ肌が、妙に艶めかしく見える。

絢乃は慌てて視線を逸らし、気分を変えるように口を開いた。


「・・・あ、そうだ。慧兄に聞きたいことがあったんだった」

「え? 何?」

「あと一か月で誕生日でしょ? 何か欲しいものとかある?」


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