蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~




「・・・あれは、オレが悪かった。だから今度、新しいのを買ってやるよ」

「要りません」


きっぱりと絢乃は言った。

・・・あの髪飾りと全く同じものは、ないのだ。

例え同じ商品があったとしても、そのものというわけではない。

いつになく強情な様子の絢乃に、卓海は肩をすくめた。


「仕方ねぇな。・・・じゃあ出血大サービスだ。ひとつだけお前の願いを聞いてやるよ」

「・・・え?」


意外な言葉に、絢乃は思わず耳を疑った。

・・・ひとつだけ願いを聞く、とは・・・。

絢乃の脳裏に、『オレの女になれ』の期間のことが頭をよぎる。


「じゃあ、例の期間を・・・」


と言いかけた絢乃だったが、すかさず卓海は首を振った。


「それはダメだ。それはそれ、これはこれだ」

「・・・え、そんなー・・・」

「何でも聞いてやるよ。一つだけな。・・・何がいいか考えとけ、絢乃」


卓海はぽんと絢乃の肩を叩き、第二開発課の方へと歩いていく。

絢乃はその背をぽかんと見つめていた・・・。


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