蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei ~
4.一人の日々
───その週の金曜。
午後の部会で、雅人が辞めるということが正式に発表された。
第一開発課は阿鼻叫喚に包まれ、魂を失った課員達が幽鬼のようにふらつき始めた。
・・・予想はしていたが、やはりショックは相当大きかったらしい。
絢乃は雅人に理由を聞こうとしたが、雅人の周りにはいつも課員達の姿があり、なかなか聞ける機会がない。
来週にでも落ち着いたら雅人を捕まえて聞いてみようか。
と思っていた絢乃だったが・・・。
金曜の夜。
絢乃は寒風の中を、コートの前を寄せてマンションへ続く道を歩いていた。
・・・卓海に言われた期限も、明日で終わりだ。
明日さえ乗り切れば、自分はお役御免となる。
もう慧の目を避けてコソコソする必要もない。
なんとか無事に乗り切って無罪放免を勝ち取りたい。
と思いながら玄関のドアを開けた絢乃だったが、中が暗いことに気付き、首を傾げた。
「・・・あれ? 慧兄?」